光を透過する磁性ガーネットと呼ばれる材料は、磁気と光の相互作用（磁気光学効果）が強く、光を磁場で、コントロールすることができます。例えば、磁場を用いて、磁性材料の磁化状態（Ｎ極Ｓ極の向き）を変えると、磁性体の中を通る光の進行方向を変えたり、光の偏光面を変えたりすることができます。磁性材料の応答速度はナノ秒以下と高速であり、磁化状態が変わっても磁性材料の位置は動かないので、磁性材料を用いると機械駆動部分が無い丈夫で高速なデバイスが作製できることが知られています。さらに、磁気的状態のみを変化すればよいため、磁性材料そのものに電極などの凹凸をもつ構造物を作る必要が無く、表面を平坦に保つことができます。これは、光応用デバイスの開発に非常に向いています。このような利点をもつ磁気を用いた光変調技術を、本研究では、ハイパワーレーザーに利用します。磁性材料を用いてハイパワーレーザーを作製すると他の物理現象を用いたときの１００分の１程度以下に小型化でき、原理的にマイクロチップのサイズにできることが分かっています。しかし、実際に小型のハイパワーレーザーをチップ化するには、良質な磁性膜が必要であり、同時に、多層化する必要があるなどの技術的な課題があります。これらを一つ一つ解決し、これまでにないハイパワーな光デバイスチップの実現を目指します。本研究の実施には、国内外の幅広い分野の研究者の意見や協力が必須です。これに加え、従来とは違った新しいスケールのデバイスであるため応用先の選定には、異分野の多様な意見が必要であると考えています。TI-FRIS事業を通じて、これらを得る機会を積極的に捉え、本研究を魅力的なものとしていきたいと思います。