細胞は内因性および外因性により生じる活性酸素種（ROS）に常に曝されていますが、各種の抗酸化物質と抗酸化酵素が協調的に作用することでROSは消去されています。過剰なROSは酸化ストレスの亢進をもたらし、癌をはじめてとする種々の疾患に関わると考えられています。生体内の主要な抗酸化物質であるグルタチオン（GSH）は、ROS消去において重要な働きを担い、GSH枯渇は、鉄イオン依存的なネクローシス様の細胞死フェロトーシスを引き起こします。フェロトーシスは、癌や神経変性疾患に関わると考えられており、これらの治療への応用が世界的に精力的に行われています。
　私は、GSH合成に必要なアミノ酸であるシステインの細胞供給経路とGSH維持に関する研究を行ない、GSH枯渇によるフェロトーシスの機序の解明を目指しています。本研究では、癌や神経変性疾患などの疾患とフェロトーシスとの関係を解析すると共に、フェロトーシスを制御する食品由来の機能性成分の探索とその機能性成分の健康の維持・増進への影響を明らかにすることを目的とします。本分野をリードするドイツの研究グループと国際共同研究を進め、助言や支援を頂きながら、GSHレドックス系に影響を与える食品由来の機能性成分の探索を通じて、フェロトーシス機序の解明について取り組んでいきたいと考えています。