November 9, 2022

ミニ組織モデルへの経血管刺激を電気化学的に計測 ~がんオルガノイドを用いた薬剤評価システムへ展開~(TI-FRISシニアフェロー・梨本裕司准教授)

人工多能性幹細胞(iPSC)や生体幹細胞から生体のミニ組織(オルガノイド)を作ることが可能となったことで、薬剤探索ツールとしての活用が期待されています。ミニ組織モデルの機能を維持しつつ生体内の機能に近づけるためには、ミニ組織の周囲に血管網を整備することが欠かせません。しかし、血管と統合したミニ組織モデルの機能評価の効率に課題を残していました。
 
TI-FRISシニアフェロー・梨本裕司准教授(東京医科歯科大学生体材料工学研究所、研究当時:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教)を中心とする東北大学、京都大学、九州大学の共同研究チームは、電気化学センサの一種である、走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用い、血管と統合されたミニ組織モデルの酸素代謝活動を評価するシステムを開発しました。また、実際にがんのオルガノイド(がんのミニ組織)に実際に応用して酸素代謝の変化を元に薬剤効果の評価が可能であることを確認しました。今回開発したシステムは、血管を介して投与される薬剤の応答をリアルタイムで評価できます。今後、評価項目の拡充や評価結果の安定性の向上により、薬剤スクリーニングツールとしての応用が期待されます。
 
本研究成果は、バイオセンシング分野の国際的な学術誌である『Biosensors and Bioelectronics』に、2022年10月29日付で掲載されました。
 
 
図:ミニ組織モデルの血管統合システム、酸素代謝計測システム。
(左)マイクロ流体デバイスの写真、(右)電気化学センシング、経血管刺激の模式図。(クレジット:Yuji Nashimoto et al.)
 
 
論文情報:
梨本裕司*、向本励†、今泉拓斗†、寺井崇人†、宍戸昌太郎、伊野浩介、横川隆司、三浦岳、小沼邦重、井上正宏、珠玖仁* (*責任著者、†同程度の貢献)
Biosensors and Bioelectronics
"Electrochemical sensing of oxygen metabolism for a three-dimensional cultured model with biomimetic vascular flow"
DOI: 10.1016/j.bios.2022.114808
https://doi.org/10.1016/j.bios.2022.114808
 
プレスリリース:
東北大学
東北大学学際科学フロンティア研究所
東北大学大学院工学研究科
東北大学大学院環境科学研究科