村田 健太郎

所属大学
岩手大学
部局
理工学部
職名
助教
関連領域
情報・システム

専門分野

マイクロ波工学、無線通信工学

研究キーワード

無線電力伝送
無線通信
レーダ

所属学会

Institute of Electrical and Electronics Engineers
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
The Institute of Electrical Engineers of Japan

研究テーマ

探知困難な電池切れデバイスへの高効率給電を実現するマイクロ波無線電力伝送法

研究概要

 配線・電池不要かつ位置制約なくIoTデバイスの電源確保を可能とする、マイクロ波無線電力伝送技術が注目されています。同技術では、送信アンテナから高出力のマイクロ波(数百MHz~数GHz帯の電波)を発射し、これを受信アンテナで回収し、整流器で直流電流に変換することで遠隔での電力供給を可能となります。ただし、整流器は閾値以下の強度の電波を導通させないという物理障壁を有するため、送信機に複数アンテナを用い、各アンテナが発する電波の位相制御により高電力密度の電波ビームを受信機に集束させる必要があります。しかし、上記制御には送受電機間の電波の伝搬路情報が必要となり、受信機が電池切れの場合、伝搬路状態を送信機に通知できず給電不能となるジレンマに陥ります。
 そこで本研究では、前述の整流器の物理障壁を逆手に利用し伝搬路状態を推定する新たな手法を確立しました。例えば、送信機が発する電波の強弱を変化させると、受信機は強電波のみ導通させ、弱電波は導通させず反射させます。このとき受信機は、信号源を持たないにもかかわらずあたかもオン・オフの変調信号を送信しているように振る舞い、送信機はこの疑似変調信号を検出することで送受電機間の伝搬路状態を推定できます。シールドルーム内において実施された実験では、送信機から最大2 m離れた受信範囲において、提案法により全33点中29点の受信点において80%以上の高精度で伝搬路推定が可能であることを実証しました。
 これは「電池切れデバイスの伝搬路状態は推定困難」という従来の認識を覆す結果であり、無線電力伝送実用化の上で電池切れや通信機能を持たないデバイスへの効率的な給電方法として、その応用が期待されます。