本研究では連続地震波形記録の解析により，地震や火山噴火時以外の「普段の」地殻構造の状態変化を明らかにすることを目的とします．特に，時事刻々と微小に変化する地殻構造の状態のモデルパラメータを，データ同化手法に基づいて推定します．地震が発生していない時期では，降雨による地下水位変動や気温変化等の環境変動によって地殻内部を伝播する地震波の速度が常に変化していることが観測されています．しかしながら，これまでの研究では限られた場所での結果が蓄積されるのみで，幅広い空間スケールでの環境変動に対する地殻構造の応答特性は不明瞭のままです．そこで，本研究では統一的な手法により様々な環境変動に対する地殻の状態変化を定量化します．さらに，様々な空間スケールの地震観測網を利用し，推定された状態変化のモデルパラメータを地震波動伝播理論に基づき数mから数十kmまでの空間分解能で描像することを目指します．環境変動による「普段の」地殻構造の状態変化が分かれば，地震や火山噴火時の状態をより精度良く推定できると期待されます．また，地震波解析を行うことで，直接観測できないような場所の環境変動もリモートモニタリングすることができるので，本事業を通して地震学以外の分野への応用も目指します．